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2015.12.17

「デザイン=ソリューション」ということについて考える ~『D&AD Awards 2015』を見て~

「デザイン=ソリューション」ということについて考える ~『D&AD Awards 2015』を見て~

先日、仕事の合間にアドミュージアム東京でやっていた『D&AD Awards 2015』を見てきた木村です。今日はそこで印象に残った仕事と、デザインということについて考えてみたことをまじめに書いてみたいと思います。

D&AD Awards 2015

デザインとは何か

「デザインとアートは違う」、ということはよく言われる。
デザインを勉強し始めたばかりの学生や、デザインについて深く考える必要のない世の中の多くの人はそのあたりの区別が曖昧かもしれないが、一度デザインを職業としてしまった人間であれば、この問題は常に付きまとう問題である。

では僕たち職業デザイナーが生業としてる「デザイン」とは何なのだろうか。
僕たちは何を飯の種にしてお金をいただいているのだろうか。

その一つの答えは「デザイン=ソリューション」という考え方であろうと思う。
何らかの問題や課題があり、それまでそのデザイナーが生きてきた全経験、考えてきた全知見を駆使して、そのデザイナーなりの答えをカタチにして世の中に提示すること。商品パッケージのデザインであれば、第一義的にはクライアント企業の売上向上という課題解決であるし、地下鉄構内の案内板デザインであれば、そこを初めて訪れる乗客をスムーズに目的地に案内することである。どのようなデザインであれば、大なり小なり何らかの課題を解決するために計画され、実施されている。

そこにデザイナーの個性や自己主張はあるのだろうか。一般的に、ファインアートが自己表現・自己主張を前面に押し出したものであるとすれば、デザイナーの自己主張は抑制的である。「誰々デザインの商品」というように誰が作ったかが重要なファクターであるような場合を除けば、利用者にとってデザイナーが誰かということはさほど重要ではない。最終的な製品、意匠、広告、サービスなどのアウトプットが利用者に好感をもって受け入れられ、当初の課題を解決していればよいのである。そういう意味ではこれもよく言われることであるが、「優れたデザインとはその存在を意識させないものである」という一つの見方もある。

しかしそんなデザイン稼業であっても、そのアウトプットには必ずそのデザイナーの「哲学」がにじみ出ているものであると僕は考えている。「哲学」というと大げさかもしれないが、要はその人の物事の考え方、生き方、価値観、優先順位、性格のようなものである。強い「哲学」を感じるアウトプットに出会うと、僕は心を動かされるし、感動しさえする。

前置きが長くなったが、そのようなことを改めて考えさせられる一つのアウトプットに出会ったのでここで紹介したいと思う。

『#LikeAGirl』

『D&AD Awards』という、優れたデザインやアートディレクションに与えられる国際的な広告賞がある。その2015年のアワードで「Black Pencil」という最高賞を与えられた『#LikeAGirl』というキャンペーンがそれだ。

http://www.dandad.org/awards/professional/2015/white-pencil-creativity-for-good/24202/likeagirl/

日本語での説明はこちらが詳しいのでぜひご一読いただきたい。
http://blog.redrock.co.jp/2014/07/09/pg-always-like-a-girl/

「女の子らしさ」ということについて、僕たち社会が無意識に過ごしてしまっている問題点を発見し、提示し、新鮮な気づきを与えてくれる。ハッとして、忘れていた何かを思い出し(女性でなくても)、感動する(少なくとも僕は)。

このキャンペーンデザインは、クライアントである「Always」というブランド価値に貢献し、世の中の多くの女性の生き方や考え方に何かしらの貢献をしたと思われる。そしてこの発想や表現は、それを考えだした作り手の「哲学」が絶対的ににじみ出ていると思われる。そしてその哲学のアウトプットに心を動かされる。まさに「デザイン=ソリューション」だ。

『Real Beauty Sketches』

これを見て思い出したもう一つのキャンペーンがある。
同じく「D&AD Awards」で2014年に「Wood Pencil」を受賞したDoveのブランド広告だ。

http://www.dandad.org/awards/professional/2014/branding/23356/real-beauty-sketches/

日本語での紹介はこちらが詳しい。
http://blog.nb-a.jp/movies/dove-real-beauty-sketches/

このキャンペーンにも心を打たれた。
人間の誰しもが持っているある一面を見事に浮き彫りにし、新しい光を当てている。これも素晴らしい仕事だと思う。

『すべてはサイコーではない』

最後にもう一つ、今年のアワードで印象に残ったものを紹介したい。

http://www.dandad.org/awards/professional/2015/white-pencil-creativity-for-good/24233/lego-everything-is-not-awesome/

北極海で石油掘削を進めているシェル石油を環境保護の観点から批判し、そのシェル石油と提携しているLEGO社に提携解消を訴えたグリーンピースが作成したキャンペーン動画である。なんとこの動画が公開されてから3か月後に、LEGO社は50年にも渡るシェル石油との提携契約の解消を発表したというのだからすごい。LEGO社の勇気ある、かつスピーディーな決断に驚かされるが、これも「デザイン=ソリューション」の大きな一例だろう。

余談だが、この動画のタイトル「Everything Is Not Awesome(すべてはサイコーではない)」で思い出すのは、昨年日本の広告業界で話題になった「すべての人生が、すばらしい」という長尺CMである。多くの人がいいCMだと言っていたと記憶しているが、僕はそれほどいいとは思わなかった。本当にそうか? 本当にそう言えるのか? これはいま恵まれた人間の価値観ではないのか? と僕は思った。その点、このグリーンピースのキャンペーンは「すべてがハッピーなわけではない」という世の中の真実を伝えている。かといって未来を否定しているわけでもない。逆に、すべてを肯定してしまった瞬間に忘れ去られてしまう一面もある。その一面的な(少なくとも僕にはそう思えた)言い切りに、ある種の違和感を抱いてしまった。

ウェブデザインとは?

今回は、D&AD賞をきっかけに「デザイン」というものについて改めて広義に考えてみたのであるが、「デザイン」という世界の一つの分野である「ウェブデザイン」についても、同じことが言えると思う。クライアントやユーザーが抱える何かしらの課題を解決し、少しでもいい方向にもっていくこと(ソリューション)。

課題を見つけるためには、素直で偏見のない洞察力、思いやる心、想像力といったもの。どう解決するかには、何がいい方向なのかを見極める価値観や哲学。どうアウトプットするかには、豊かなデザイン知識と技術力がそれぞれデザイナーには求められると思う。こう書いてしまうとなかなかご立派で大層なことのように思うが、要は意識の問題である。そしてそれは、見る人が見ればわかるものである。ついつい日常業務の慌ただしさに本質を忘れてしまいがちになるが、たまにはこういうものに触れ、自分たちの仕事について考えてみるのも悪くはないだろう。

この記事は、KIMURA が書きました。